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【ゲームレビュー】歴史あるギャルゲーは、『メモリーズオフ -Innocent Fille-』で有終の美を飾るのか

本作のプレイを開始すると、しばらくのあいだは「これこそギャルゲー」というご都合主義な展開が続く。ヒロインの抱えている悩みを善良な主人公(プレイヤー)が解消し、距離を縮めていきハッピーエンドを目指す。ギャルゲーを遊び慣れた猛者からすると、お約束的な展開も少なくない。

ただ、『メモリーズオフ』シリーズらしさというものを考えたときに、過去作のほとんどの作品において、いわゆる正統派ギャルゲーな展開が含まれていたことを思うと、なるほど、この作品は原点回帰を狙ったものなのだと思うだろう。

しかしプレイヤーは、そんな正統派ギャルゲーライクな物語のところどころで、気になる英単語を見つけることになる。特定シーンの蓋絵のように挿入される「LIGHT SIDE」という文字だ。明るいお話ですよといわんばかりのこの表記があるということは、これに対するものがあるのはほぼ間違いないわけで、それが一体何なのかわからないまま、数人のヒロインをクリアーしていくことになるだろう。

そして、ほぼすべてのヒロインの物語をつかんだと思ったあたりで、少し選択肢を変えてみると「HEAVY SIDE」という、まったくテイストの異なる物語が顔を出してくる。

「HEAVY SIDE」では、登場人物たちの仄暗い過去が明らかになり、得体のしれぬ悪意が人を傷つけることもある。「LIGHT SIDE」で軽めの伏線かと思っていた要素が、強いサスペンス色を帯びていくころには、本作がただの恋愛ものではないことに気づくはず。

そう、本作は極端な二面性を持つゲームなのだ。ギャルゲービギナーと玄人ゲーマーの両者に刺さるよう、あえてLIGHTとHEAVYを両立させ、それを見事に作品として完成させている。

物語の分岐方法などはシンプルな選択肢形式のものとなっていて、とても遊びやすく、物語を楽しむことに集中できる(一応、独自のシステムとして「R.A.I.N.s」という、どちらのヒロインを選ぶかという二者択一的な選択を迫ってくる場面もあるが、こちらもシステムとしてみれば選択肢の延長線上にある)。最近、ギャルゲーを遊んでいないなあという方も、ヒロインや絵柄に惹かれるものがあれば、ぜひプレイしてもらいたい。

本作は『メモオフ』シリーズとはいえ、この作品単体で楽しめるようになっている。しかし、ほんの少しだけ、シリーズ経験者に向けたオマケ要素が含まれている。

一部ルートでは、過去の『メモリーズオフ』シリーズの登場人物たちが多数登場し、ファンにはたまらない物語を見せてくれる。それは本編のLIGHT SIDE以上にご都合主義にあふれた展開だが、いちシリーズファンとしては、本当にみたかった物語が本作で見られたという感慨でいっぱいだ。

ほかにもシリーズでおなじみの警告劇場やお馴染みの名セリフなど、過去作の記憶をひっぱりだすような仕掛けも用意されている。『メモオフ』シリーズからしばらく離れていたファンであっても、本作のこうしたファンサービスには心揺さぶられるものがあるはず。

それもそのはず、本作の制作陣は『メモオフ』に並々ならぬ愛情を持つクリエイター揃い。本作の発売日にちなんで、リアル卒業式イベントなんかを開催しちゃう人たちなのだ。

2018年10月25日に本作のNintendo Switch版が発売された。携帯機モードとTV出力モード、ふたつのプレイ環境を使い分けられるNintendo Switchは、アドベンチャーゲームと相性抜群だろう。

『メモオフ』シリーズのコアな楽しみ方のひとつとして知られる「舞台探訪」にも一役買ってくれることにも期待している。『メモオフ』の舞台となっているのは、神奈川県の鎌倉、江の島近辺。休み休み携帯ハードで撮影した写真をチェックしながら舞台探訪を楽しめば、ゲーム内の背景とぴたりと重なるような場所も見つけられるはずだ。

幸いにも、本作の舞台は冬なので、Nintendo Switchの発売時期は最高のタイミングだとも言える。僕はこのゲームがきっかけで江の島の魅力にどっぷりとハマり、東京から徳島に移住した今でも、年に2、3回は宿をとって江ノ島観光を楽しんでいる。中村屋羊羹店の海苔羊羹は本当に最高。ただでさえ美味しいのに島をのぼってのぼって、一息つくタイミングで食べるとさらに。またこの冬は江の島に行くつもり。

そして、「ラストメモリーズ」とは書いたものの、本作のファンディスクのほうが2019年春に発売予定となっている。ラストメモリーズセットという豪華限定版を購入した人向けに、リアル卒業式イベントまでやったのに……と思いつつも、この作品が少しでも続いてくれるのは幸せなことだ。

できれば、ファンディスクのほうも売れて、やっぱりラストじゃありませんでしたと言われたい。そうそう、個人的な希望としては、ファンディスクではなにとぞ、嘉神川ノエルちゃんにスポットをあててほしい。先行して発売されたPlayStationプラットフォーム版では「柚莉エンド後を描く追加シナリオ」が追加ダウンロードシナリオとして配信されたのだが、僕にとって本作のメインヒロインはノエルちゃんなのだ。『メモリーズオフ6 Next Relation』ではいちヒロインの妹キャラクターだった彼女が、本作でメインヒロインに昇格して、抱いたコイゴコロのために頑張っているのをみて、ぐっときてしまった。どうか、ファンディスクは、ご都合主義でも甘すぎるほどでもいいので、より幸せな彼女の姿を見せてほしい。


文●浅葉たいが

『メモリーズオフ』公式サイト

©MAGES./5pb./GloriaWorks

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