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『SAO アリシゼーション』の物語を8つの曲に込める――“Symphonic Alicization Orchestra”の狙いを聞く

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『SAO アリシゼーション』完全生産限定版Vol.1~8に同梱されているキャラクターソング“Symphonic Alicization Orchestra”の企画意図を5人のクリエイターに聞きました。


 TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』の完全生産限定版 Blu-ray&DVD Vol.1~Vol.8に同梱されている特典CDで聴けるキャラクターソング“Symphonic Alicization Orchestra”を手掛けるクリエイターのインタビューをお届けします。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
▲1月30日に発売されたアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』Blu-ray&DVD第1巻のパッケージビジュアル。

 本作は、第15回電撃小説大賞“大賞”を受賞した川原礫先生が執筆、イラストをabec先生が手掛ける電撃文庫『ソードアート・オンライン』シリーズの新作TVアニメです。原作小説9巻から18巻におよぶ長大なストーリー《アリシゼーション》編を、全4クール構成で最後まで描くことが決定しています。

 Blu-ray&DVDの完全生産限定版は、原作者・川原礫先生書き下ろしの新作短編小説やキャラクターデザイン、総作画監督・鈴木豪さんの描き下ろしジャケット、特製ブックレット(12P)、特典CD(キャラクターソング収録)、その他豪華特典が同梱された仕様となっています。

 このうち特典CDに収録されたキャラクターソングは、“Symphonic Alicization Orchestra”と銘打たれており、Vol.1~Vol.8までの全8曲で、まるでミュージカルのように『SAO アリシゼーション』の壮大な物語を追体験できるというプロジェクトになっています。

 そこで今回は、このプロジェクトの作詞・作曲とディレクションを手がけているクリエイターのみなさんに、インタビューを行いました。《アンダーワールド》の世界を音楽でどのように描き出しているのかを語ってくれていますので、要注目です。

 参加メンバーは、Vol.1収録『Beginning the destiny』の作・編曲を手がけた百石元さん、Vol.2収録『Holding the shadows』の作・編曲を手がけたやしきんさん、Vol.3収録『Cherishing the memory』の作・編曲を手がけたebaさん、全8曲の作詞を担当するhotaruさん、ディレクターの岡村弦さんの5名となっています。

全8曲で『SAO アリシゼーション』の物語をミュージカルのように描くプロジェクト

――まずは“Symphonic Alicization Orchestra”というプロジェクトの意図についてお聞かせください。

岡村さん: Vol.1~Vol.8の完全生産限定版 Blu-ray&DVDに各1曲ずつ、全8曲のキャラクターソングを収録することになりまして。よく目にする形の企画だと、登場人物1人1人にキャラソンを1曲ずつ作っていくということになると思うんです。でも『SAO アリシゼーション』では、ファンのみなさんが驚いたり楽しめたりする工夫を何かしたいと思ったんです。

 『SAO アリシゼーション』がこれまでの『SAO』と違うのは、《アンダーワールド》で暮らしている人たちは、そこが人生のすべてだと思って生きている点で、キリトがそこで過ごす期間も非常に長くなっている点です。それならばミュージカルのように、長いストーリーで進んでいくものが作りやすいのではないかと思ったんです。

 全曲を通して一貫性のあるストーリーを描くことで、音楽を聴く人の頭のなかに、そのシーンの映像がどんどんと浮かんでくるような作品になればおもしろいかな、という発想になりました。

――実際の楽曲の制作は、どのように行われているのですか? 

岡村さん:通常のキャラソンであれば、リリースのスケジュールに合わせて1曲ずつ順番に作っていくのですが、“Symphonic Alicization Orchestra”は8人の作曲家の方に一気にお願いして、8曲すべてを同時に作り始めています。完成は順次させていくという形なんですけど。

 全曲を通して『SAO アリシゼーション』の長いストーリーを描くことが企画意図としてあったので、あらかじめ私が“この曲ではこのキャラクターで、こういったシーンを描く”と決めた上で、8人の方に作曲をお願いしています。その一方で作詞に関しては全曲を、hotaruさんお1人に一任しています。

――8曲それぞれに異なる作曲家の方がバラエティに富んだメロディーを生み出す一方で、歌詞に関してはお1人の方で一貫性を持たせているんですね。では、1曲目の『Beginning the destiny』について、具体的なお話を聞かせていただけますでしょうか。

“Symphonic Alicization Orchestra”PV

岡村さん:この企画の1曲目ですから、この曲で全体の流れを示せるような作品にしたいという意気込みで作っています。ここから冒険が始まっていくという、RPGの壮大なプロローグみたいなものになったらいいなと。

 そこで私のほうから作曲の百石元さんに、子ども時代のキリト、ユージオ、アリスで、1話のルーリッド村の出来事を中心に描いてくださいとお願いしました。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
『ソードアート・オンライン アリシゼーション』 『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

百石さん:原作に沿った形でというお話でしたから、まずは原作を読もうと思っていたんですよ。そしたら、私の息子が原作を全巻持っていて(笑)。息子が『SAO』の大ファンだったので、いろいろと話を聞いたりサポートしてもらったりしながら、原作を読み込むところから始めました。

 原作について息子とディスカッションしながら、自分もこの世界に身を置いたつもりで作っていった感じですね。

――ちなみに息子さんは、完成した曲をお聴きになったのですか? 

百石さん:彼は、父親が作る曲にはまったく興味を示さないんですよ(笑)。

 音楽を聴いて、これはあのシーンだ、このシーンだと思い浮かぶような曲の流れにしてほしいと岡村さんから言われていましたので、ストーリーと音楽がリンクするようにと、すごく意識して作りました。

 打ち合わせの時に、日本人にあまりなじみのないケルト音楽から始めてみてはどうですか? と提案があったので、曲はそんなイメージで始まります。それで曲の最後は、不穏な雰囲気を漂わせて終わる形になっています。

――まさにミュージカル調というお話がよくわかる、ドラマチックで壮大な楽曲ですよね。では、作詞に関してはいかがでしょうか? 

hotaruさん:この曲に限らず全体について言えることとしては、“ミュージカルを想像させるようなもの”というオーダーだったんです。けれど、完全にミュージカルなのかと言ったら、やっぱりちょっと違うんですよ。

 ミュージカルだとセリフのような歌詞になるんですけど、それよりはもう少し詩的に、キャラクターの主観を三人称的な視点で語っていくようなスタイルというのが、今回の歌詞の落としどころかなと考えました。

岡村さん:作詞も作曲もなんですが、ミュージカルらしさがあることと、ポップスであることのちょうどいい落としどころみたいなものに、初期のすり合わせでは苦労しました。

 ミュージカルだと状況を説明するセリフのような歌詞があって、メロディーもそちらに寄せすぎてしまいます。ですが、キャラソンをイメージして聞いていただくと、そこにどうしても違和感があるというか……。ストーリー自体はアニメを見て知っているわけですから、それをわざわざ説明する必要はありません。

 サビにはしっかりとポップスの要素を残したうえで、そういうミュージカル的なことをやるという試みだったのですが、そのバランスは、クリエイターのみなさんが上手いところに落としどころを作ってくれていると思います。

――詞と曲のどちらから先に作っていったのでしょうか?

hotaruさん:“Symphonic Alicization Orchestra”では基本的に、できあがった曲を聞いて、そこに歌詞をつけていくという曲先行の形で進めています。

 1曲目の『Beginning the destiny』ですが、この曲は序盤と終盤に、プロローグ的なパートとエピローグ的なパートを入れていて、ナレーションのように、完全に主人公たちの目線ではない視点で語っているんです。

 そのぶん、3人がソロで各自の心情を語ることのできる中盤のパートが少なかったので、そのなかでなるべく各キャラの個性を発揮できるように、ということを意識しています。

リアルワールドのアスナと凛子を描いた2曲目は、あえてデジタルな楽曲で

――続いて2曲目の『Holding the shadows』ですが、この曲はミュージカル調というよりも、いわゆるJ-POPに近い雰囲気になっていますよね?

岡村さん:ここでミュージカルっぽい感じから離れてしまうのは、こちらとしてもわかってはいつつ、こういう曲になりました。というのも、この曲はリアルワールドの《オーシャン・タートル》にいる明日奈と神代凛子の目線になっているので、クラシカルに聞こえる要素はあえて入れていないんです。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』 『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

 この曲だけはリアルワールドを描いているので、《アンダーワールド》を描いた他の楽曲と対比をつけたくて、作曲のやしきんさんには現代的なイメージの楽曲をお願いしました。最終的に他の曲も出そろうと、通して聴いていただいたときに「『Holding the shadows』はストーリーの流れ的にこういう曲になっているんだな」と納得してもらえると思っています。

やしきんさん:このオーダーをいただいた時に、僕だけ生楽器のレコーディングはないんだなと思いました(笑)。みんなで並行して楽曲を作るという企画で、レコーディングも一緒にやるといった話も出ていたので、みんなでワイワイと一斉にやるお祭り感があったんです。そんななかで僕だけは、自分の家でサウンドを作るのかと(笑)。

 でも一方で、それを特別に思う気持ちもあったので、完全に違うものとして、いい曲になればと思い曲を作りました。

 この曲はいわゆるポップスに近いものなので、とてもわかりやすいサビにしたかったんです。そこでサビのメロディーをまず作って、それを基軸にして次にサウンド面で、《オーシャン・タートル》のルックスなどの世界観を意識して、サイバー感のあるサウンドにしています。

 あとはデュエットなので、2人の声が絡み合っていくようなイメージを持って作りました。明日奈と凛子という組み合わせだったので、“大切な人とは違う世界に残された女性たちの、憂いやせつなさ”をメロディーに込めた、デジタルサウンドというイメージですね。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

――『Holding the shadows』の作詞についてもお話を伺えますでしょうか?

hotaruさん:やしきんさんと同じで、僕のほうもポップスに振り切ろうという感じで書きました。アスナと凛子は、2人とも想いを寄せる人がいるんですけど、その人が今は手の届かないところにいるという感情が共通しているので、そこを描いていく形になっています。

 1番のAメロで明日奈の、2番のAメロで凛子の感情をそれぞれ描いて、サビは2人のユニゾンになるので、どちらとも受け取れるような歌詞にしなければいけないんです。かといってそれが、表面的に薄っぺらくなってもいけないので。

 他の曲もそうなんですけど、複数のキャラクターの感情が共通しているんだけど、そこを浅くならずにちゃんと深い感じで描くというのは、工夫しているところですね。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

3曲目は修剣学院の女生徒3人が、爽やかな青春ロックを歌う!

――次は3曲目の『Cherishing the memory』ですが、この曲ではソルティリーナ、ロニエ、ティーゼという、帝立修剣学院の女性キャラ3人が歌う形になっていますね。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

岡村さん:物語的にはちょうど修剣学院の話にあたるところなので、キリトたちのそばにいた女の子たちに歌ってもらうのがいいだろうと思ったんです。私個人としては、ライオスとウンベールの意地悪な曲というのも興味があったんですが、あまり需要がなさそうなので(笑)。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』 『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

――それはそれで聞いてみたかったような気もします(笑)。

岡村さん:学院のお話も最後のほうで事件が起こるんですけど、そこはいったん忘れて、修剣士という《アンダーワールド》のエリートが集まる学院での青春劇を、女の子3人が歌う爽やかな青春ロックみたいな曲でいきたい、と作曲のebaさんにはお伝えしました。

ebaさん:4曲目以降は物語のほうも戦闘モードみたいなところに入っていくので、この曲はめちゃくちゃポップで、華やかなものにしておきたいという思いがありました。僕は『SAO アリシゼーション』ではリーナ先輩がいちばん好きなので、この曲が来てとてもうれしかったですね(笑)。

――ちなみに、リーナ先輩のどんなところがお好きなんですか? 

ebaさん:ふだんはカッコいいんですけど、たまにキリトのことを心配して泣いたりするのが、キュンとするなぁって思いますね。楽曲のほうも先輩1人と後輩2人という組み合わせなので、バランス的にリーナ先輩が歌っている時間のほうが長くなっているんですけど。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

――こちらの作詞に関しても、hotaruさんにお聞かせいただければと思います。

hotaruさん:修剣学院の生活はたしか、2年か3年ぐらいあるんですけど、そのすべてがアニメで描かれているわけではないですよね。

 この曲を歌う3人はそれぞれ、学院の生活のなかでキリトとユージオに対する信頼や尊敬の気持ちを持っていると思うので、そういった関係性が垣間見える書き方をしています。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

大長編に対して、クリエイターも総力戦で向きあっています

――ここまで3曲についてお話を伺いましたが、4曲目以降もすでに完成しているのでしょうか?

岡村さん:現時点ではまだ、すべて完成しているわけではないですね。同時に作り始めているとはいえ、やはり作業の順番などもありますので。

 先ほどebaさんが言われたように、3曲目まではポップさがあるんですが、4曲目以降は整合騎士たちのと闘いが本格的になり、ストーリーも重ためになってくるので、より重厚な曲が仕上がりそうだなという感じになっています。

――hotaruさんは全曲の作詞をおひとりで手がけていますが、現時点でのお気に入りの曲はどれでしょうか?

hotaruさん:4曲目の『Finding the hope』というカーディナルの曲ですね。ただ単純に、僕自身はカーディナルがタイプというだけなんですけど(笑)。

やしきんさん:カーディナルがタイプなんですね。どのあたりが好きなんですか?

hotaruさん:性格ですね。あのツンデレはなかなか新鮮だなと思いました(笑)。

――4曲目はどのような曲になっているのでしょうか?

hotaruさん:楽曲的にはメロディーが少なくて、余白がすごくある曲なんです。カーディナルは数百年も生きているので、こちらとしては書きたいことがいろいろあるのに対して、メロ数が少ないので情報量が限定されていて、書くことを凝縮しなければいけないんです。

 そこで、どういうところをどう書けば伝わるんだろうといろいろ考えることで、こちらとしては感情移入できた気がします。

――では最後に、完成した楽曲を聴くのを楽しみにしているファンのみなさんに、メッセージをお願いします。

百石さん:こうした企画ですので、音楽を通してこの物語を連想していただければ嬉しいです。

やしきんさん:『アリシゼーション』は《アンダーワールド》の世界を大長編で描いている作品なので、そこに対して作曲家もディレクターも総力戦で向きあっています。

 他のみなさんの曲を聴いたわけではないですけど、自分としては手応えがあったので、この大長編ならではの盛り上がりを曲からも感じてもらえたらいいなと思います。

ebaさん:キャラ愛が詰まっている曲なので、その愛を感じてもらえればと思います。一緒に楽しみましょう。

hotaruさん:今回は全曲に関わらせていただいているというのが、自分としては大きいところになっています。

 まだすべての作詞が終わっているわけではないんですけど、全曲がそろってまとめて聴いた時に、楽曲と物語の魅力が一体化したように感じられると思うので、完結するのを楽しみにしてもらえればと思います。

岡村さん:最終的に8曲まとまって聴いてもらった時に、リスナーのみなさんがこれはあのシーンだなと思い浮かべながら追体験できる曲になれば、というのがいちばんの思いです。

 とは言いながら、1曲1曲がすごくクオリティの高いものが出来上がってきているという自負がありますので、あまり難しく考えずに聴いてもらって、盛り上がってもらえれば嬉しいです。

 そして私の脳内には、さらにもう8曲分の企画もあるので、みなさんの応援でこの企画が後半2クールでも続けられるようになったら嬉しいなと思っています。どうかよろしくお願いします!

■TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
【放送情報】
TOKYO MX……毎週土曜24:00
とちぎテレビ……毎週土曜24:00
群馬テレビ……毎週土曜24:00
BS11……毎週土曜24:00
MBS……毎週土曜27:08
テレビ愛知……毎週月曜26:05
AT-X……毎週月曜22:30(※リピート放送あり)

【配信情報】
<地上波同時(毎週土曜24:00)配信>
AbemaTV

<10月13日以降、順次配信開始>
Amazonプライム・ビデオ、dアニメストア、DMM.com、GYAO!、HAPPY!動画、Hulu、J:COMオンデマンド、NETFLIX、niconico、PlayStationVideo、Rakuten TV、U-NEXT、あにてれ、アニメ放題、バンダイチャンネル、ひかりTV、ビデオパス、ビデオマーケット、フジテレビオンデマンド、ムービーフルplus

【スタッフ】(※敬称略)
原作:川原礫(電撃文庫刊)
原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec
監督:小野学
キャラクターデザイン:足立慎吾、鈴木豪、西口智也
助監督:佐久間貴史
総作画監督:鈴木豪、西口智也
プロップデザイン:早川麻美、伊藤公規
モンスターデザイン:河野敏弥
アクション作画監督:菅野芳弘、竹内哲也
美術監督:小川友佳子、渡辺佳人
美術設定:森岡賢一、谷内優穂
色彩設計:中野尚美
撮影監督:脇顯太朗、林賢太
モーショングラフィックス:大城丈宗
CG監督:雲藤隆太
編集:近藤勇二
音響監督:岩浪美和
効果:小山恭正
音響制作:ソニルード
音楽:梶浦由記
プロデュース:EGG FIRM、ストレートエッジ
制作:A-1 Pictures
製作:SAO-A Project

【出演声優】(※敬称略)
キリト(桐ヶ谷和人):松岡禎丞
アスナ(結城明日奈):戸松遥
アリス:茅野愛衣
ユージオ:島﨑信長

(C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

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