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『カリギュラOD』フリュー山中P&和田監督が語る、制作の裏側にある真実とは?

著者:ゲーム★マニアックス編集部

コアなプレイヤー層を中心に話題を呼んだRPG『Caligula-カリギュラ-』。その産みの親である山中プロデューサーと、テレビアニメ版の監督を務める和田氏へインタビューを敢行。同作の制作の裏側にあった事情とは……。


コア層をうならせた話題作のキーマンたちにインタビュー!

2016年6月にPS Vitaで発売され、強烈なインパクトを持つストーリーとキャラクターが評価され話題となったフリューのRPG『Caligula-カリギュラ-』(以下『カリギュラ』)。

見た目や雰囲気はアトラスの人気RPG『ペルソナ』を思わせるものがあるが、実際にプレイしてみるとそんな先入観など吹き飛んでしまうほどの野心的な要素が、これでもかと詰め込まれている。

とくに「ゲーム好き」を名乗るプレイヤーほど、その尖った世界観、ストーリー、バトルにやり込み要素といったシステムにハマるはずだ。

評判は瞬く間に広まり、その結果2018年4月からは同作を元にしたテレビアニメが始まり、さらに2018年5月17日には新要素を多数搭載した“完全版”とも言うべき移植作品『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』(以下『カリギュラOD』)が発売されている。

新星の登場を待ち望んで止まない家庭用ゲーム業界において、まさに“超新星”である。

そして現在、アニメ版もまた熱い注目を浴びている。ゲーム版とは異なる設定や展開、ゲーム版以上に鮮烈に描かれたストーリーやキャラクター……。その尖り具合はゲーム版に勝るとも劣らず、賛否両論巻き込んで視聴者を賑わせている。

いったい何が、ユーザーを、視聴者を駆り立てるのか? 今回は、産みの親であるフリューの山中拓也プロデューサーと、テレビアニメ版の監督を務める和田純一氏に、両者が深く関わるテレビアニメ版を軸にゲームとアニメの違いや、両者が現在の形で完成した経緯などを伺った。


▲(左)和田純一(わだじゅんいち)氏。アニメーター、テレビアニメ『Caligula-カリギュラ-』監督。他の監督作品に『長門有希ちゃんの消失』など。 (右)山中拓也(やまなかたくや)氏。フリュー所属のゲームクリエイター、『Caligula-カリギュラ-』および『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』プロデューサー、テレビアニメ『Caligula-カリギュラ-』原案担当

原作者公認、むしろ積極的参加の同人作品!?

――まずは『カリギュラ』の各プロジェクトがどのように生まれ、作られていったのかを時系列順に整理していただけないでしょうか?

山中 フリューでは、年に1本オリジナルの作品を出すことにしていたのですが、その中で2016年に発売する予定のものとして企画したのが『カリギュラ』でした。企画自体が立ち上がったのは2013年~14年にかけてで、約2年の開発期間を経て今回のアニメのもとになる作品ができあがりました。

アニメ化のお話をいただいたのは、ソフトを発売して少し経ったころだったと記憶しています。ユーザー間の評価もよかったので、そういった評判を見てお声掛けいただいたのかな、と思っていますが。

アニメのプロデューサー・松岡さんには、シナリオ担当の里見直さん(※1)など、スタッフの面からも興味を持っていただいていたようですね。

※1 里見直(さとみ・ただし)……『カリギュラ』および『カリギュラOD』のシナリオ担当。かつてアトラスで『女神異聞録ペルソナ』、『ペルソナ2 罪』、『ペルソナ2 罰』のシナリオ、世界観設定を担当しており、同シリーズに自身がモデルのキャラクターや薬局、テーマソングが存在していたことでも有名。

和田 自分が『カリギュラ』に参加し始めたのは、2017年の4月くらいですね。そのころはすでにアニメの企画が動き出していて、「そろそろ固めようか」という時期になっていました。それからゲームもプレイしました。

「原作とは違うことをやってみたい」というのはつねづね考えていることですが、それをやらせてもらえるなら……という条件で監督をやることになりました。最初から「中二病全開で何かやってやろう」と目論んでいました(笑)。

山中 ただ、アニメ化のお話をいただいたときにはすでに『カリギュラOD』も作り始めていたんですよ。結果として、ゲームのリリースとアニメの放映の時期がたまたま重なってしまいましたが、プロジェクトとしてはまったく別のところで動いていたんです。

和田 『カリギュラOD』については、アニメとは完全に別進行のプロジェクトなので、僕はまったく内容は知りませんでした。

山中 だから楽士ルートがあると伝えたときは「パクられた!」って文句を言われたんですよ(笑)。

和田 僕は楽士たちのキャラクターがけっこう好きで、彼らのエピソードを随所で挟んでいきたいと考えていたので。そうしたら「今度出る新作でそれやりますから」と山中さんに言われてしまって……。

山中 こちらのほうが先ですから!(笑)


▲『カリギュラOD』からの新要素、楽士ルート。「帰宅部の面々よりも人間臭い」と、ユーザーからも評価される楽士たちの一員となって行動できる
 

和田 そういうこともあって、『カリギュラOD』を落とし込むのは作業的に不可能だったんです。だから、アニメは完全にPS Vita版に準拠した内容になっています。もっとも、設定などが大きく変わっていますが。

山中 もちろん『カリギュラOD』もアニメとは独立したものになっていて、式島律という男の物語は『カリギュラOD』で補完するということはなく、アニメだけで完結します。同じタイミングになってしまったせいで、アニメからゲームに誘導するという手法なんじゃないか!?と邪推される方もいるかもしれませんが、作り手としてはそんな思いはまったくありませんでした。

むしろ、両者にそういった商売っ気を持たせたくなかったので、それぞれが同じ世界観の独立した作品として成立するように手を尽くしてきたつもりです。その点については、和田監督とも意見が一致しているところだと思います。

――山中さんはアニメでは“原案”としてクレジットに名前が出ていますが、実際にアニメ制作にはどのくらい関わっているのでしょうか?

山中 通常、原作者がどのくらい制作にタッチしているのかは存じ上げていないのですが、僕は脚本会議には毎回出席していました。

和田 その他、毎回絵コンテが上がったら山中さんにも確認を取ってもらっていました。実質、原作とか原案という立場ではなく、ほとんどこちら側(のスタッフ)でしたね。

山中 そうですね、いろんな時間帯で会議が行われて……(笑)。ゲームもそうですが、アニメ制作って本当に大変だな、と思いました。

基本的なスタンスとしては、原作者があれこれ口を出すというのではなく、「こういうものはどうですか?」とかポジティブな提案ができればと考えていました。僕はアニメーションに関しては素人なので、演出などはプロにおまかせしようと決めていました。

ただ、「キャラクターを守る」ということだけは貫きたかったので、脚本会議などには参加させていただいていましたが。

和田 我々も、山中さんがいてくださったからこその安心感はありました。アニメで設定や物語展開を変える際にも、「原作と少しズレてはいますけど、おもしろいからありだと思います」とおっしゃってくれて、原作者が太鼓判を押してくれるなら大丈夫だろう、と(笑)。

むしろ、「ゲームではこうなんですけど、アニメではこう変えてみてはどうでしょう?」と逆に提案していただくことも、よくありました。原作者自身が同人誌を作っているような、そんな感じでしょうか。

山中 メビウスは妄想するのに向いている世界なので、いろんな設定を考えるのもやりやすかったですね(笑)。

――ファンのあいだでも“尖った”作品として高い評価を受けている『カリギュラ』ですが、もともとどんな層をターゲットとして想定していたのでしょうか?

山中 最初に企画したときには、ダークでニッチな雰囲気を出したいと考えていたんです。大手がバンバン予算をかけて出す大作RPGが世に溢れている中、フリューのような中小のメーカーが勝負するにはそこしかない、と思っていました。

ターゲットは、いわゆる“王道に入れなかった人たち”です。なぜなら、僕もそうだから(笑)。具体的には30代の、自分と同年代の人たちを想定していました。つまり初期からのボカロ世代でもあります。起用しているボカロPの面々も、その世代ならば「ワカる!」というチョイスにしたつもりです。


▲楽曲提供はもちろん、“楽士”という存在もボカロPがあってこそ生まれたものだと言える
 

ただ、おぐちさん(※2)がキャラクターデザインを担当したビジュアル面が若い世代に刺さってくれたおかげで、思いのほか幅広い年齢層に受け入れてもらえたのは幸いでしたね。

※2 おぐち……イラストレーター。『カリギュラ』ではキャラクターデザインを担当(アニメ版はキャラクター原案)。スマホゲームのイラストや小説の挿絵なども手掛けている。

和田 アニメもターゲットはほぼ同じです。ただ、ゲームと同じようにアニメでもダンジョンを突破してボスを倒して改心させる……という流れにしてしまうと、どうしても“勧善懲悪”の少年マンガ的なノリになってしまうんです。

ですから、アニメではアプローチを変えて“お話の力”で『カリギュラ』の世界観を成立させることにしました。それが、ゲームとは違う展開につながったというわけです。

山中 おかげで、好きな人にはとことん楽しんでもらえる作品になったと思っています。

和田 『カリギュラ』は人と人とのコミュニケーションがテーマとなる作品なので、それぞれの人間性を掘り下げてナンボだと思っているんですよ。アニメで描かれた帰宅部のメンバーたちの現実世界での姿は、かなり衝撃的だったと思いますが、そこはあいまいにせずにあえて踏み込んで表現しました。


▲あまりに衝撃的なシーンに、ファンのあいだでも議論が巻き起こったという

テレビアニメがゲームと違う話になった理由

――アニメの設定は、どんなところにこだわって作られたのでしょうか?

和田 式島律という存在と、彼に関わるものすべてですね。律はμの開発者のひとりということが最終話近くになるとわかるのですが、その設定に収まるまでにもいくつかアイデアがあったんです。

僕が最初のころに出したのは、律は人間としては存在していなくて、ウイルスソフトのようにμを排除するために作られたプログラムである、と。

ただ、山中さんに「この作品は人間がこの世界にやって来て苦しむ病理を描くものだからちょっと違うのでは」と指摘され、ボツにしました。

山中 僕は僕で別の意見を出していて、「律は死期間近の老人である」と。「それはおもしろい設定かもしれないが、あまりに愛されないだろう」と言われてボツになってしまい……。「確かにそうですね」と納得しました(笑)。

和田 そうやって、企画を進めていく段階ではある程度ゲームに寄り添った構成で「メビウスからどうやって脱出するか」を主眼に考えていたのですが、主人公をどのような人物にするかで作品全体のアプローチや流れが変わってくるんじゃないかと思って、まずはそこを固めることにしました。

PS Vita版をプレイしたとき、僕は「(佐竹)笙悟のほうが主人公みたいだな」という印象を受けました。そうなると、アニメもふつうに話を組んでいては笙悟の話になってしまいかねないんじゃないかと危惧したんです。

だとすると、それを上回るくらいの驚きを主人公で与えなければ……ということでたどり着いたのが、現在の律の設定でした。


▲主人公のような立ち位置にいる佐竹笙悟。そんな彼を凌駕するキャラクターとして、“式島律”という人物像は作られていった
 

山中 律というゲームにはない存在が入るだけで、その異分子がみんなの知っているメビウスを荒らし回っていくというか、まったく別のものに変えてしまったんです。それが僕には気持ちよかったですね。

和田 ある意味、禁じ手に近いやり方ではありますが……。そうして決まった律の設定ですが、記憶喪失にして最後まで隠すことにしたのは、そのほうが視聴者に気持ちよく物語を楽しんでもらえると思ったからです。

その代わり、笙悟を最初に変身させて進行役の一翼を担ってもらいましょうと。

山中 それから、どんどん物語が決まっていきましたね。それにしても、律のキャラクターは強烈だったと思います。ゲームでは主人公=プレイヤーだったのが、アニメでは律=プレイヤーではないという覚悟が見えるキャラ設定だと思います。

和田 ゲームでは、仲間たちの心の奥に踏み込むのか否かを選べるようになっていましたが、律に関してはあえて“踏み込めない”キャラクターにしました。笙悟への最初のセリフなど、ゲームをプレイした人ならすぐに「こいつは俺たちの知っている主人公ではない」とわかると思います。


▲ゲームでは絆を深め、キャラクターシナリオを進めていくとその人物の心の奥に踏み込むことができるようになる。その先には……
 

山中 ゲームの主人公と律とでは、カタルシスエフェクトで胸に咲く花が違うんですよ。花はその人の個性を表すので、花が違えば人も違うというわけなんです。律の花はオープニングでも確認できるので、じつはかなり早い段階から気付いていた人もいたと思うのですが、実際にどれだけの人が気付いていたのかはわかりません。


▲ゲームの主人公(写真上)とアニメ律の(中央、下)。カタルシスエフェクト時の律と見比べてみよう

和田 ゲームの世界ではよくいる、個性のない“無色の主人公”は、アニメでは反対にやりづらい存在なんです。むしろ、敵の楽士たちのほうが共感できるようなキャラクターばかりだと思いました。でも、楽士モードは『カリギュラOD』で先を越されてしまったので(笑)。

山中 (笑)。「楽士ルートをアニメ化してほしい」という声もけっこうあるみたいなんですよ。人気があるんです、彼らは。

ご存じのように、ゲームとアニメでは同じキャストを起用していますが、一番苦労したのは沢城千春さんだったと思います。アニメでは唯一のオリジナルキャラクターで、ゲームで演じた主人公とはまるでアプローチが違いましたからね。

和田 確かに、かなり苦悩していましたし、それだけにすごくがんばってくれたと思います。最初は落ち着いたカッコイイ感じの演技も入っていたのが、途中からは律そのものになっていきましたから。

山中 ゲームでは、どんなアプローチにも耐えうるような、オーソドックスな演技をお願いしていました。ユーザーの想像からもほとんど逸脱しないイメージに収めてくれていたと思います。でも、アニメでは「そんなことは一切忘れて、別キャラクターとして演じてほしい」と非情な通告をすることに……。

――アニメのクライマックスに向けての見どころや、『カリギュラOD』の魅力についても、あらためて語っていただけないでしょうか?

和田 本当にオンエアできているかなぁ……(笑)。

山中 がんばってくださいよ!(笑) 僕から言えるのは「律がとにかくよくしゃべる」ということです。

和田 最終話はほとんど“沢城さん無双”になるはずです。絵コンテを切るときに、もっと台詞を増やそうとしたら尺が足りなくなりそうなくらい。

山中 律がμに対して話し掛けるシーンがあって、そこでひたすら律がしゃべることになるのですが、μという人間の心が理解できない存在に対して、人間である律が彼女に理解してもらおうとしてできることは、延々と言葉を連ねて気持ちを伝えるだけなんです。

和田 だから、見どころと言えば沢城さん、ということになるんじゃないでしょうか。あれだけひとりのキャラクターが延々としゃべるという展開は、僕も見たことがありません。初めはもっと別の展開を考えていたのですが、山中さんの後押しもあって、前例のないお話を作り上げることができたと思っています。

山中 バトルではなく対話でなんとかしよう、というのは僕も好む展開でしたので「いいじゃないですか」と言いまくった記憶があります(笑)。ただ、どんな絵ができあがっているかは、当日オンエアされるまでわからないのですが……。

和田 僕もわかりません(笑)。

山中 『カリギュラOD』では目玉のひとつとして“楽士ルート”を用意しました。彼らは、いったいどんなことを考えてメビウスに残る道を選んだのか? もし、アニメを観て楽士たちに興味を持った方は、楽士ルートをプレイして彼らが楽士になった理由などを知ると、より『カリギュラ』の世界を深く楽しむことができると思います。

もっとも、楽士たちの現実についても「知らなきゃよかった」と思うことがあるかもしれませんが、それも含めて『カリギュラ』ですから。現実にある出来事が現実にあるように描かれている作品なので、珍しい体験として楽しんでいただければと思います。


PS4『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』公式サイト

TVアニメ『Caligula -カリギュラ-』公式サイト

© FURYU Corporation. © FURYU/Caligula製作委員会

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